人生前半の振り返り

38歳の私がこれまでの人生を振り返り、次へ活かすことを自分の視点から書いてみました。

実技人選

 中学一年生のときにクラス毎の合唱会があった。ピアノ伴奏者や指揮者もクラスで一人ずつ決めないといけない。何年も共に過ごしている仲間なら、どの子がピアノがうまいとか、指揮者向きの性格とか、なんとなく分かるものだ。でもひと月前まで別々の小学校に通っていた人々の集団だ。まだ話してもいない人がお互い多い中で、だれがどのくらいピアノが上手いかなんて全く分からない。

 私の通った学校は地味で控えめな校風だった。プロテスタントの信仰のもと、不遇な人や弱いものを助けましょう、譲り合いましょう、と教えられていた。

 人と競争して順位を決める運動会のようなイベントすらも学園長は反対していたくらいだった。

 まだ校風にも染まっていない新入生の私達は中学受験という激しい競争の名残りもあり、立候補者もお互い譲らない。みなが納得して一名を決めるために、実技の人選を行うことに先生も承知する。

 音楽室のピアノで音楽の先生が出した課題曲を初見で弾いてどちらが上手いか、クラスのみんなと先生とで決めるという方法だ。このような実技選挙は6年間でこの一回だけだったが、このことは強いインパクトを私に与えた。この学校で何かになるには実力を発揮する必要があるんだ。初めての実技人選で私はそう思った。

 ここからは私の偏見だけど、滑り止めで入学した子なのかもしれないと思った。立候補者の二人からは、この学校では絶対に一番になってやる、というライバル心が伝わってくる。どちらが選ばれたかは覚えていないが、そのとき私は、自分も受験に落ちたことをいつまでも悔やんでいてはいけない、頑張ろう、そういうパワーをこの二人からもらった。